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【弁護士が解説】会社を守る「証拠」がない!個人SNS利用が 企業の法的存立を危うくする理由

公開日:2026.03.13 更新日:2026.03.13

コミュニケーションアプリ「LINE」を筆頭に Instagram、TikTok のDMなど、今や、生活に深く浸透している個人 SNS によるメッセージのやり取り。その圧倒的なスピード感と手軽さは、ビジネスの現場においても大きな魅力です。しかし、会社が正式に導入したツールではなく、従業員が自身の判断で、私用の個人アカウントを業務に用いる「シャドーIT」の状態が放置されているとしたら――。それは、企業の法的存立を揺るがしかねない「時限爆弾」を抱えているのと同じかもしれません。 

弁護士の視点から見れば、ビジネスシーンでの個人 SNS の利用は、単なるセキュリティの懸念に留まりません。そこには、経営者が予期せぬタイミングで直面することになる、甚大な法的リスクが隠されています。 

利便性の追求は、企業の成長に不可欠です。しかし、その「スピード」の代償として、会社の信用や資産をリスクにさらしては本末転倒です。 

本記事では、個人 SNS を業務利用し続けることで生じる法的リスクを整理し、万が一の事態が起きた際に「会社を、そして従業員を守る」ための社内指針(ポリシー)策定のポイントオンライン法律事務所タマの代表、増田 周治弁護士に解説いただきます。 

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そもそも、なぜ個人 SNS や LINE の業務利用は法的リスクになりうるのか 

ビジネスで個人の SNS アカウントを使うことは、法律上の観点から見ると「自社のコントロールが及ばない場所に、会社の機密情報や労務リスクを放置している」状態に他なりません。なぜそれが深刻なトラブルに直結するのか、3つの法的側面から解説します。

「所有権」の壁:会社はスマホを強制的に調査できない

最大の障壁は、端末とアカウントの所有権が「個人」にあることです。個人のスマホを介した通信は憲法上の「通信の秘密」や強力なプライバシー権で守られています。たとえビジネス上の不正が疑われても、会社が強制的に中身を調査・消去することは法的に極めて困難であり、無理におこなえば逆に会社側が「プライバシー侵害」で訴えられるリスクさえあります。

「証拠」の壁:会社を守るログが手に入らない

トラブル発生時、会社を守る最大の武器は「客観的なログ(記録)」です。 法人向けツールなら全履歴を管理者が抽出できますが、個人アカウントのデータは本人の端末にしか残りません。ビジネス上の重要なやり取りを個人 SNS でおこない、従業員が自分に不都合なメッセージを削除してしまえば、会社は事実を反論する証拠を失い、取引先との裁判において不利な状況に追い込まれます。

「密室」の壁:私物スマホがハラスメントの温床に

ビジネスがきっかけであっても、個人間の SNS でのやり取りは第三者の目が届かない「完全な密室」になりがちです。 これがハラスメントを助長し、深刻化するまで表面化しない原因となります。会社が管理不可能な場所でトラブルが起きる状況を放置していると、「職場環境整備義務違反」として会社が多額の損害賠償を問われることもあります。 

【パワハラ・セクハラなどのハラスメントリスク】

パワハラの賠償額は一般的に 30万〜100万円程度ですが、精神疾患による休職や自殺などの深刻な事態に至った場合、金額は跳ね上がります。過去には自殺事案で企業は安全配慮義務違反を問われ、1億円を超える高額賠償を命じられた判決も存在します。 以下、実際の判例をみてみましょう。

Case1:客観的証拠がハラスメントの冤罪を防ぐ

2022年、大学は当時所属していた准教授が女子学生に対してセクシャルハラスメントをおこなったとして、准教授を諭旨退職処分にしました。 大学は、学生からの訴えや一部の証拠に基づき、准教授の優越的な立場を利用した不適切な行為があったと判断しました。しかし、准教授からの地位確認訴訟において、学生との間で交わされたLINEメッセージの内容が裁判所側に認定され、諭旨退職が重すぎる処分との判断がくだされ、結果として准教授が労働契約上の権利を有することが確認されたうえ、大学は、未払いの給与数百万円を支払うことになったのです。

ハラスメントの冤罪が発生した場合、企業は、処分された側への損害賠償や、弁護士費用などによる相当な損害を被ります。ログを残すことができるツールを企業側が導入することで、誤った結論を下す可能性を減らせるでしょう。

Case2:セクハラを放置していた企業にも賠償責任発生

セクハラの被害申告を放置することは、企業にとって極めて深刻な経営リスクです。セクハラの被害申告の初期対応を誤った結果、従業員からの裁判の提起を避けるために、示談金として数百万円の支払いを余儀なくされるケースは少なくありません。 さらに大きな影響を持ちうるのは、SNS 等での拡散です。証拠となるメッセージのスクリーンショットが一度でも世界中に公開されれば、長年築き上げてきた企業の信頼やクリーンなイメージは、一瞬で崩れ去ってしまいます。 


企業が管理できるコミュニケーションツールを導入することで、ハラスメントの兆候に早期に気づけるだけでなく、トラブル発生時にも迅速かつ適切な対応が可能になります。適切な管理体制を整えていれば、こうした最悪の結果は未然に防げたはずなのです。

【労働法リスク】

労働基準監督署の調査や従業員からの請求により、過去の労働時間管理が不適切だったと判明した場合、不足していた残業代を過去分にさかのぼって支払う義務が生じます。現在、賃金請求権の消滅時効は「3年」となっています。つまり、最大で過去 3年分までさかのぼって支払う必要があるのです。

Case:未払い残業代約 230 億円の実例

2017年、ヤマト運輸は、労働基準監督署からの是正勧告をきっかけに、当時の消滅時効である過去 2 年に遡り、数万人規模の未払い残業代約 230 億円を支払いました。一人、あるいは数名の従業員の声に対して支払い義務が生じると、同じ状況の全従業員(退職者含む)に対しても同様の支払いが必要になるケースが多く、金額が膨らむリスクがあります。 

労働基準法に則った就業規則の見直しに加え、ログや業務上のコミュニケーション記録の把握を通じた適正な労働時間管理をおこなうことが、企業の法的・社会的リスクの回避に繋がります。

【情報流出・損害賠償リスク】

個人 LINEやSNS等を通じ、会社の内部情報をやり取りすることを会社が黙認している場合、内部情報が漏えいした場合に、それらの情報が、法的に『営業秘密』と認められず、損害賠償請求が困難になる他、個人情報保護法違反による深刻な社会的責任を問われるリスクがあります。

Case:機密情報の持ち出しで5億円の損害賠償等を求める訴訟へ

かっぱ寿司の元社長が、前職である「はま寿司」の仕入れ原価や食材使用量などに関するデータをコピーして不正に持ち出し、使用した事件です。この行為は不正競争防止法違反として、刑事裁判で有罪判決がくだされました。さらに、はま寿司側が営業秘密の使用差止め・廃棄と5億円の損害賠償を求めて提訴した民事訴訟にまで発展しました。

重要な情報の管理や共有を、個人が所有する端末やシステムでおこなうと、かっぱ寿司の件のようなリスクが発生する可能性、いざ情報が漏えいした場合の追跡がおこなえない可能性が高くなります。そのような業務状況では、機密情報が営業秘密として認定されず、有事の際に不利になり、社会的責任も厳しく追及されるでしょう。 

そうしたリスクを最小限に抑えるためにも、会社として公的なコミュニケーションツールを導入し利用を徹底することが対策として有効です。

まとめ:クリーンな組織文化こそが、最強の経営戦略

テクノロジーの進化に伴い、労働環境のスタンダードは劇的にアップデートされています。従来のやり方のままでいることがブランド毀損や機会損失、ひいては多額の金銭的損失を問題を生む問題を放置していることになりかねません。また、人手不足の顕在化に従い、労働者としても適正な労働環境を重視する傾向がみられます。 

企業として透明性の高い「クリーンな組織文化」を強みとして打ち出すことは、企業の持続的成長を左右するうえで重要な経営戦略といえます。



※ワウテック株式会社は2023年9月1日にグループ会社であるキングソフト株式会社と合併いたしました。

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