現在、多くの職場において業務連絡のデジタル化が進む一方、ノンデスクワーカーが中心となる介護・福祉業界では、スタッフ間の情報共有やシフト連絡の運用に課題を抱えているケースが少なくありません。とりわけ「仕事専用の携帯電話(連絡ツール)」が支給されず、個人のLINEなどの私用SNSアカウントを業務に流用することで生じるハラスメントやプライバシーの懸念が問題視されています。
今回は、介護・福祉業界に従事する300名を対象に実施した最新のアンケート調査(2026年5 月)をもとに、現場のコミュニケーション環境の実態と、従業員が抱える心理的ストレス、そして今求められる対策について解説します。
調査概要
調査名称:介護・福祉業界の連絡実態調査
調査方法:株式会社アスマークによるWebアンケート調査
調査期間:2026年5月26日~同年5月29日
有効回答:介護・福祉業界に従事する20歳~69歳の男女 300名
調査結果
業務連絡の約7割が「個人の私用スマホ」に依存
普段の業務連絡(シフト確認や情報共有など)を主にどのデバイスで行っているかという設問に対し、全体の67%(約7割)が「個人の私用スマホ」と回答しました。社用スマホが支給されている割合は31%に留まり、従業員個人のプライベートなデバイスに依存している現場の実態が浮き彫りとなりました。

特に、女性スタッフが多い職場や、従業員数が50人未満の中小規模の施設においては、個人の私用スマホの利用率が7割を超える顕著な傾向が見られます。一方で、500人以上の大規模企業になると「社用スマホ」の支給率が逆転して多数派となっており、企業の規模によって情報セキュリティや端末支給への投資状況に大きな格差があることが伺えます。
個人SNSの職場共有における心理的ハードル
業務連絡のために「個人のSNSアカウント(LINEなど)を職場に教えているか」という設問に対し、「教えていない」と答えた人が全体で6割弱を占め、プライバシーに対する心理的なハードルが高いことが示されました。

しかし年代別で細かく見ると、若年層ほど「教えている」割合が高く、年齢が上がるにつれて「教えていない」割合が増加する傾向にあります。デジタルネイティブに近い若い世代ほど、アカウントの共有自体には抵抗感が低い様子です。
実際に、アカウントを職場に教えている層(全体の41.3%)のうち、「共有すること自体に抵抗・不安があった」と答えたのは42.7%と半数以下でした。これだけを見ると、「現場のスタッフは個人LINEでの連絡をそこまで嫌がっていないのではないか」と捉えがちですが、本当の課題はアカウントを教えた後の「運用の実態」に潜んでいました。
休日連絡に潜むストレスと潜在的な離職リスク
個人アカウントを職場に共有している層に対して、「あなたは、休日に業務連絡の通知が個人のSNSアカウントに届くことを、煩わしいと感じたことはありますか。」との設問に対し、53.5%(過半数)が「煩わしいと感じたことがある」と回答。さらに、それによって「休日でも気が休まらない(ストレスを感じる)」と答えた人は60.0%に達しました。

特にこのストレスは男性よりも女性(6割以上)で高く、さらに現場の中核を担う30代~50代の世代において「煩わしさ」を感じている割合が高いことが分かりました。
現在は「現状維持」として受け入れているものの、3人に1人(37.1%)は「個人SNSを業務流用する職場で働き続けることに抵抗がある」としており、これらは表面化しにくい潜在的な離職リスクとして企業経営に重くのしかかっていると言えます。
約7割が「公私の連絡用アプリを明確に分けたい」
こうした状況の中で、スタッフが強く望んでいるのが「公私の切り分け」です。
「個人のスマホを業務で使う場合、連絡用のアプリは仕事用とプライベート用で分けたいか」という設問に対し、69.3%(約7割)が「そう思う(分けたい)」と回答しました。さらにその中の4割が「非常にそう思う」と強い意志を示しています。

年代別で見ると、50代~60代のシニア層では「アプリを分けたい」という意向が7割台と特に高く、仕事とプライベートのメリハリを明確に求める傾向が強くなっています。従業員は「個人アカウントを職場に教えること」以上に、「プライベートの領域に仕事の通知が侵入してくること」にストレスを感じていることが示唆されています。
注目すべきは、「個人アカウント共有への抵抗・不安がない層」に限定してクロス集計を行っても、そのうち32.4%が休日連絡の煩わしさを、41.0%が業務ストレスを感じており、さらに半数近くがアプリの使い分けを望んでいるという点です。
解決策としてのビジネスチャット「WowTalk」
こうした現場のコミュニケーション課題を解決する手段として、ビジネスチャット「WowTalk(ワウトーク)」のような法人専用ツールの導入に対する意見を求めたところ、利用意向(使用したい・計)は33.8%となり、非利用意向(29.3%)を上回る結果となりました。
また、「どちらともいえない」と答えた中立層が37.1%存在しており、これらは今後の導入ポテンシャルが非常に高い層であると考えられます。
従業員が求める「WowTalk」への期待の声(自由記述より)
- 仕事とプライベートの分離:
- 「プライベートと仕事の線引きができそう。公私のメリハリがつくなら利用したい」
- 「専用アプリなら個人LINEを使わなくて済むので、退職する時にも面倒がなくて良い」
- 便利・使いやすさ:
- 「LINEのように使えるので使い方はすぐにマスターできそう。PDFなどのデータファイルもそのツールの中で見られるので使い勝手が良さそう」
- 情報共有のスムーズさ:
- 「連絡がきちんと届くと休んでいても取り残されることがないので安心はできる」
利用したい理由として最も多く挙げられたのは、やはり「仕事とプライベートの分離」でした。また、シンプルな操作性により「誰でもすぐに使いこなせる」「情報共有がスムーズになる」といった機能面のメリットも評価されています。
ツールの導入に対しては、単なる業務効率化という「機能的価値」だけでなく、個人の領域を守りメンタルの疲れを解放する「情緒的価値」が強く評価されている点が最大の特徴です。
まとめ
今回の調査から、介護・福祉業界における連絡実態は「個人の私用スマホおよび個人SNSアカウント」への依存度が高く、それが現場スタッフ、特に中核世代やシニア層の「休日に気が休まらない」という心理的ストレスに直結していることが明らかになりました。
現場のエンゲージメントを高め、潜在的な離職を防ぐためには、単に「業務が効率化するから」という機能的な価値だけでなく、「従業員のプライベートとメンタルを守る」という情緒的な価値(安心感)を企業側が理解し、法人専用の連絡ツールを導入することが急務です。新しいツールの導入にあたっては、「誰でも簡単に使えるシンプルな操作性」を丁寧に伝えることで、現場の習得不安を払拭し、中立層の利用意向への転向をスムーズに促すことができるでしょう。


