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中小企業のDXで“よくある課題”とは?具体的な進め方を解説

公開日:2022.09.20 更新日:2023.10.02

グローバル化の進む市場で生き残るために、日本の中小企業でもDX推進のニーズが日に日に高まっています。まずはビジネスにおけるDXの本来的な意義を考え、中小企業の課題とその解決策を探ってみましょう。

DXの3つのメリットと需要の高いITツールのタイプを理解すれば、中小企業でも低コストでDXに踏み出し、効果を感じることが可能です。経済産業省が中小企業向けに提供する参考事例や指針についても併せて紹介します。

この記事のポイント
中小企業のDXは「コストの問題」や「IT人材不足」が課題となり、進められないことがある中小企業のDXは「ビジョンの策定」「デジタル化の実践」「運用のチューニング」といった3つのステップで進める中小企業がDXを確実に進めるためには「スモールスタート」が鍵となる

そもそも“DX”とは何か?

社会のIT化は物事の変化のスピードを大きく変え、人々の生活もビジネスも激動の時代の渦中にあります。

ユーザーのニーズの多様化、市場競争のグローバリゼーション、高まるサステナビリティへの対応要請など、時代の潮流をビジネスチャンスに変えていくためには、従前通りの仕事への取り組みでは必ずしも十分ではないのが現状です。

これは大企業に限らず、中小企業にも同じことがいえます。

そんな状況の中、企業を進化させ、時代に即したビジネスを推進するために大きな手助けとなるのがDXです。

DXは「デジタル・トランスフォーメーション」の略で、「デジタルによる変容」を意味します。企業におけるDXは、デジタル技術を用いてビジネスを活性化させ、企業のバリューアップと成長を目指すものです

DXの最終的な目的は市場における企業競争力の強化であり、デジタル技術を職場に導入することそのものではありません。

バリューアップと成長のために自社が求める要素を補うアシストとしてのDXの意義を、経営者をはじめ従業員全員が理解し、ビジネスのポジティブな変容を目指すことが理想といえます。

現在地から目標までの間にDXというはしごを架け、1段ずつ上っていくための準備として、まずは中小企業でみられるDX推進の課題を明らかにしていきましょう。

中小企業のよくあるDX課題3選

中小企業のDXにおいては、いくつかの物理的・心理的障壁が課題となってスタートを切りにくいケースが存在します。中小企業に多い以下の3つの課題について、問題点の実態と解決策を考えてみます。

①コストがかかるので実践できない

DXと聞くと、全社の基幹システムの刷新や最新鋭のDXツールの導入がイメージされ、中小企業にとってはコスト面での負担が大きい印象があります。

たしかに、予算に応じて高価なツールを選択することもできますが、実際は中小企業のビジネスや組織の規模に合わせた施策が可能です

日本企業の多くがDXに向き合う中で、中小企業向けのDXツール市場も発展し、今日までに多くの手頃なサービスが提供されるようになりました。

従業員1人あたり数百円の月額でDXツールを導入できる例もあり、自社に合うサービスを吟味することでコストパフォーマンスのよいDXを実現できます。

②具体的にどのような効果があるのかが見えない

DXのビジネスへの貢献度が分からないので予算を割くことが難しい、というのも中小企業でよくある課題です。DXツールの中には、コミュニケーションのためのツールやデータを蓄積して使用するツールもあり、効果発現までに時間のかかるものもあります。

しかし、DXの効果については既に推進中の中小企業の事例から知ることが可能です。経済産業省がDXにおける優良中小企業を選定した最新の「DXセレクション」から、モデル企業の取り組みについて詳しく知ることもできます(※1)。

また、DXツールの製品サイトにある導入事例の紹介ページから、企業の担当者が語るツールの導入背景や使用感、効果など、気になる情報を入手するのもおすすめです。取引先など他の中小企業の担当者に直接話を聞くのもよい方法でしょう。

自社のDXの効果は導入してみるまで理解しにくいのが難しい点ではありますが、自社に近い規模や同業種の中小企業の事例は、DXのイメージを具体化する上で大いに参考になります。

※1:DXセレクション(中堅・中小企業等のDX優良事例選定) (METI/経済産業省)

③DXに対応できる人材がいない

社内にIT担当者がいない場合、DX担当として誰を指名するか、あるいは新たにIT人材を雇用する可能性に悩む中小企業もあります。仮に、有識者なしではDX推進が困難だとすると、多くの中小企業でどのようにDXに対応しているかが気になるところです。

この課題に対する解決策は2つあります。1つは、中小企業で使いやすく専門知識が不要なDXツールを選択すること。ITの知見なしで扱えるツールも存在し、使用感は無料トライアルなどで確かめられます。

もう1つの解決策は、DXツールを扱う業者によるサポートの利用です。多くのDXツールは導入時や定着の過程で専門のサポートがあり、利用方法の不明点やトラブル対応について問い合わせができます。ツールの開発・運営業者はITの専門家を擁し、DX事例の知識も豊富に持っているため、迷わずに相談してみましょう。

中小企業におけるDXのメリット

中小企業でDXの取り組みを始める場合、事前に部門リーダーなどに賛同してもらいスムーズにスタートさせるために、DXのメリットを正しく説明する必要があります。中小企業にとって特に価値が高いのは、生産性向上、人材確保、BCP強化の3つのメリットです。

生産性向上

既存の人的資本をもとに、1人あたりの生産性が向上すればビジネスはさらに成長できます。今までより多くの客先にアプローチする、商談の成功率を高める、問い合わせ対応の精度と数をアップする、処理する事務作業量を増やすといった生産性向上を手助けするのが、DXの力です。

誰もオーバーワークをすることなく、デジタル技術の力で生産性を向上できれば、中小企業と従業員一人ひとりにとって大きなメリットといえます。

一般的な中小企業のオフィスにPCが存在しなかった1990年代以前と現在を比較すると、生産性の違いは明白です。DXにも同様かそれ以上の生産性向上への貢献が期待でき、ビジネス変革に不可欠な取り組みといえます。

人材確保

少子高齢化に伴う労働人口の減少傾向により、日本の中小企業の人材確保は今後いっそう困難になると考えられます。しかし、中小企業でDXを推進すると従業員1人あたりの生産性が向上するだけでなく、雇用できる人材のステータスも変わります。

ビジネスチャットやクラウド型オフィスなどのDXツールがあれば、業務によりテレワークなどの多様な働き方が実現しやすくなります。そのため、オフィスの近隣に住む人材という限られた母数からの採用ではなく、通勤圏外や遠隔地、日本国外にまで採用可能な人材の選択肢が広がるのです。

DXによる業務の効率化は時短勤務なども可能にするため、育児や介護、副業との両立を希望する人材にとって魅力のある職場となります。DXの効果で働きやすい中小企業となることで従業員エンゲージメントが高まり、結果として離職率の低下にも繋がるでしょう。

BCP強化

自然災害、サイバー攻撃、人為的ミスや通信系の障害などで社内のサーバー内のデータが棄損すれば、中小企業の資産である情報が失われ、最悪の場合はビジネスの継続に支障をきたすこともあります。

そういったBCP(事業継続計画)の観点からも、中小企業のDX推進はリスクヘッジとなり得ます。

顧客データや契約書を社内サーバーでなくクラウド型のDXツール上に日常的に保存していれば、通常業務を行っているだけでデータはオンライン上に安全にセーブされ、緊急事態が去ってからも円滑に業務を再開することが可能です。

中小企業においても、「万が一」の場合にしっかり備えた会社運営の手腕は企業価値の一角をなすものと考え、DXによるBCP強化を図りましょう。

中小企業におけるDXの進め方|3つのステップ

冒頭でも伝えたように、DXとデジタル技術の導入とはイコールではありません。最初に中小企業として目的と目標を明らかにし、次にDXツールを選んで導入し、最後に変容から定着へ遷移するという3つのステップを踏んで進めていきます。

①経営戦略・ビジョン(あるべき姿)の策定

中小企業のDXにおける最初のステップは、組織とビジネスの今後を見据えた共通認識の言語化です。

一見してDXとは遠く隔たった作業のように感じられますが、自社の成長の課題、目指したい方向性、そこに至るシナリオなどを明確にし、経営戦略やビジョンを策定することが次のステップの土台になります

経営戦略は、長期(10年)、中期(3〜5年)、短期(1年)のスパンに分けて今後のビジネス展開を具体的に計画したものです。企業におけるビジョンとは、「こうありたい」「こうあるべき」という姿を指します。

まず「自社の技術で子育てがしやすい社会を実現する」というビジョンを策定した場合、例えば長期経営戦略では「ビジョンを実現する新事業を育て、経営の柱として成長させること」を目指した計画を立案します。

そこからバックキャストして中期経営戦略は「マーケットに新事業の価値を提供し、広く普及させること」を目指し、短期経営戦略では「新規マーケットを探索し新事業の芽を生み出すこと」を標榜した計画を立てます。

②業務や仕組みのデジタル化を実践

①で策定した経営戦略やビジョンをベースに、「目的と計画の達成のために必要なもの・足りないもの」をあぶり出し、そのうちどの部分がデジタル技術で解決可能かを考えます。

上述のビジョンの例では、社会の「子育てのしやすさ」を追求する上で、自社の従業員の状況も鑑みて矛盾のないビジネスモデルを構築する必要があります

育児中の人が働きやすい環境を中小企業の中に整えるために、DXツールの導入は効果的です。

経営戦略に掲げた新事業のスタートは既存事業との同時進行が求められますが、新たな人材を採用する代わりに今いる従業員の業務をDXで効率化すれば、時間を確保することもできます。

新規マーケットの探索結果や新規顧客のデータは、クラウド型のDXツールで一元管理すれば業務の進捗状況が社内で簡単に共有でき、人の異動や新メンバーの参加にも柔軟に対応できるので、ビジネスのスピードを落とすことなく戦略を実行できます。

③安定運用に向けてチューニング

DXツールを導入しただけで終わりではなく、デジタル技術が中小企業の中にしっかり定着して効果を生み続けるように調整することも、DXのプロセスの一部です。

  • ツール利用の問題点を洗い出し、必要に応じて外部のサポートを活用する
  • ツールの利用率が低い場合は理由を探って改善措置を取る
  • ツール導入後の効果を測定し、目的を果たしているか定期的に確認する
  • 効果が低い場合、利用法や付加機能を調整する
  • 利用者にヒアリングを行い、さらなる利用価値の可能性を検討する

DXツールの導入後にこうしたチューニングを行うことで、中小企業におけるDXの効果を最大化でき、目的である企業競争力の強化に一歩ずつ近づくことができます。

中小企業のDX例|ITツール活用

実際に日本の中小企業でよく導入されている5タイプのDXツールを紹介します。どのタイプが自社に必要か、ニーズと照らし合わせてみましょう。

ビジネスチャット

テキストでのチャットやインターネットを介した通話などができるビジネスチャットは、中小企業のコミュニケーションの効率性を高めるために重要なDXツールです。

自由なタイミングでメッセージを送る、隙間の時間にすぐ返信する、起きた事案を現場から報告する、上長からの指示を伝達するといった多様な使い方ができ、業務の遂行スピードに好影響を与えます。

ビジネスチャットによりタイムリーな情報共有が可能になることで、商談中に出た質問を持ち帰ることなくその場で解決できる、出張やリモートワーク中にも案件の進行が遅延しない、働き方の悩みを相談しやすくなり職場の雰囲気がよくなるなど、ストレスの少ないコミュニケーションが実現できます。

シンプルな操作性が特徴のビジネスチャット「WowTalk」

中小企業に適したビジネスチャットの一例として、シンプルな操作性が特徴のWowTalk(ワウトーク)は誰でも直感的に使いこなせるツールです。特別なトレーニングなしで導入できるので中小企業でも現場の負担が少なく、定着までに時間がかかりにくいことから、DXの効果を早く体感できます。

国産ビジネスチャット「WowTalk」

クラウド型オフィス

クラウド型オフィスは、オンライン上でファイルの編集や保存ができるDXツールです。権限を付与された人だけがアクセスでき、オフィス外からの利用もできることで中小企業における働き方の可能性が大いに広がります

例えば、新人が作った資料を上長に確認してもらう場合、クラウド型オフィスに入れた状態で共有すれば、上長がテレワーク中や出張中であっても確認が可能です。次の出社のタイミングを待つことなく仕事が進められるので、ビジネスのスピード感が大きく向上します。

中小企業で日常的に使うデータの保存をクラウド型オフィスに一括すれば、データの紛失の心配もなくなり、従業員の欠勤時や異動後もデータの所在が分かるので安心です。

クラウド型オフィス「WPS Cloud Pro」

クラウド型オフィスのWPS Cloud Pro(ダブルピーエスクラウドプロ)は、複数人での1つのファイルを同時編集することも可能です。通話やオンラインミーティングをしながら一緒に資料を作るといった使い方もでき、オフィス内外の境界なく質の高い仕事をスピーディーに行うことができます。

法人向けクラウド型オフィス「WPS Cloud Pro」

Web会議システム

昨今、急速に普及が進んでいるWeb会議システムは、働き方の多様性を支援するDXツールの代表格です。PCなどの画面の前でビデオ通話ができ、既存のインターネット環境が使えれば余計な通信コストはかかりません。

社内外との打ち合わせが多い中小企業では特に利用価値が高く、研修やセミナー、ブレーンストーミング、面談、個人指導など、従来対面で行っていた多くのシーンで使えます。

最近では採用に向けた説明会やワンデーインターンシップをオンラインで行う企業もあり、ツール導入当初の「会議」という目的を超えたDXの価値の広がりを感じられる好例です。

Web会議システムは、無料版と有料版で一度に参加できる人数や利用拠点数が異なり、用途や予算、利用頻度に合わせたツール選びがポイントです。

勤怠管理システム

タイムカードに機械で打刻するタイプの勤怠管理を、DX化により進化させることも可能です。

勤怠管理システムを導入すると、紙のタイムカードではなくデジタルデータで勤怠情報を管理できるので、入力作業や給与への反映作業を省人化できます。出退勤時刻を正確に記録でき、打刻忘れやタイムカードの紛失、データ入力時のミスなどもなくなります。

単に出退勤を記録するだけでなく、残業時間や休暇日数の集計からシフト管理の機能まで備わった勤怠管理システムもあり、中小企業の個々の従業員だけでなく人事や総務担当者の負担も軽減されます。

デジタル化できる作業はツールに任せ、人でなければできないクリエイティブな仕事に集中できる環境を作ることは、中小企業の成長を促進してくれます。

タスク管理ツール

多人数が関わる複雑なプロジェクトや長期プロジェクトでは、進捗状況の管理と共有に多くの時間を割くことになりがちです。リーダーがチームメンバー全員の進捗を確認することも容易ではなく、作業の遅延やミスの発覚が遅れれば中小企業にマイナスな影響を与えることもあります。

タスク管理ツールを導入すると、チームメンバー全員の作業進捗が可視化されます。作業進度を見ながら人員調整をしたり、ツール内で質問や相談をすることもでき、いわば交通整理を行うように全体の流れがスムーズになります

もちろん個人で担当する案件でも、タスク管理ツールが使えます。上長や権限を持つ従業員が閲覧できるようにしておけば、担当者は進捗報告や記録作りに貴重な時間を割くことなく、プライオリティの高い作業に集中して取り組むことができます。業種ごとに、適したスタイルのタスク管理ツールを導入するのがおすすめです。

経済産業省「デジタル・ガバナンスコード」も参考に

中小企業のDX化のために経営者が取るべき対応の全体像を確認したい場合は、経済産業省が2020年に公表した「デジタルガバナンス・コード」が役立ちます。DXに向けた基本姿勢や目指すべき方向性、ステップごとの取り組みの例が示され、実践に踏み込んだ内容といえます。

特筆すべきは、DX化を含むビジネス戦略を社内外のステークホルダーに向け発信することが強調されている点です

中小企業のDXが高い企業価値を志向するものである以上、従業員、顧客、取引先、地域社会などのステークホルダーと対話し、得られたフィードバックを反映することで企業価値を磨き上げていくことが求められます。

※2:中堅・中小企業等向け「デジタルガバナンス・コード」実践の手引き

他社のDX事例から学べることも多い

DXの推進にあたっては、他社の取り組み事例を参考にすることもおすすめです。課題感が似ている場合、学べることは多いでしょう。以下の記事では、国内と海外の企業、それぞれのDX事例をまとめています。

記事の前半で紹介した「よくある課題」を上手に解消している企業もあり、DX実現に向けて大いに参考になるはずです。

ビジネスチャットで中小企業のDXをスモールスタート

DXの開始はまずは手の届くところから、大きなコストをかけないスモールスタートで十分です。

ビジネスチャットのWowTalkのように全従業員が毎日利用するDXツールであれば、低コストながら中小企業の新たなインフラとして効果を実感できます。機能や使用感、導入事例などをリサーチして、自社のニーズとのマッチングを検討してみるとよいでしょう。

中小企業のDXには課題も存在しますが、他社が既に実践している解決策も探ることができ、その先には大きなメリットがあります。

DX推進は、中小企業が新たな価値創造に向けチャレンジの幅を広げたり、人を引きつける魅力的な職場環境を醸成したりするための契機と捉え、ビジネスのポジティブな変化を体験してみてください。

※ワウテック株式会社は2023年9月1日にグループ会社であるキングソフト株式会社と合併いたしました。

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