業務効率化のメリットや実施の手順とは?役立つおすすめツールを8種ご紹介
国内企業が抱える課題の一つに、業務効率化が進まないという問題が挙げられます。企業成長の停滞が進む中、生産性や収益性を向上するためには既存のアプローチでは限界が迫っており、業務効率化によって新しい取り組みを実践する必要があります。
また、業務効率化においてはさまざまなツールが各企業で活躍しており、大企業はもちろん、個人や中小企業においても導入可能なサービスが次々と登場しています。
本記事では、業務効率化によって得られるメリットや具体的な進め方、そして業務効率化に役立つツールについて詳しくご紹介します。
目次
業務効率化とは
そもそも業務効率化とは、既存の業務における課題を解決することで、業務の無駄を減らし、従業員の負担軽減や生産性の向上といった効果をあげるための取り組みを指します。会社の売り上げを伸ばし、無駄を削減して収益性を高める取り組みは、企業が確かな成長を実現する上では不可欠の取り組みです。
これまでの事業拡大の主なアプローチといえば、事業規模をそのまま拡大するという取り組みが一般的でした。既存のシステムや設備を拡張し、オフィスや工場に新たなスペースを設け、より多くの人手を確保するというものです。
しかし世の中の動向がダイナミックに変化する今日においては、この手法によって成長を確実にすることは一段と難しくなっており、コストがかさむ分リスクの大きな選択肢となりつつあります。詳しい理由は後ほど解説しますが、事業成長においては規模の拡大よりも既存業務の効率化が必要とされているのです。効率化に向けたサービスも市場に数多く登場しており、各社で施策が実行されています。
生産性向上との違い
業務効率化と合わせて紹介される機会が多いのが、生産性向上です。どちらも似たような文脈で紹介されるだけでなく、同時に取り組まれることも多いため混同されることもありますが、具体的には異なる意味を持つ言葉です。
まず業務効率化とは、「社内の業務における無駄を削減し、必要なリソースを削る」というインプットの最小化を実現するための施策全般を指します。余計な人手や維持管理コストを減らしながら、既存の生産性を維持しようというのが業務効率化です。
一方で生産性向上は、文字通り製品やサービスのアウトプットを最大化し、より多くの売上獲得に結びつけようという取り組みです。
生産性向上のためには人材確保や設備投資による規模拡大のアプローチもありますが、近年トレンドになっているのは、業務効率化によって無駄を削減しつつ浮いたリソースで生産性向上を進めようという取り組みです。
業務効率化によって社内リソースの削減に努めることで、生産性向上に向けた予算の確保をスムーズに行えるため、インプット・アウトプットのどちらを優先するにせよ、業務効率化施策は企業の成長に必須の取り組みと言えるでしょう。
業務効率化が求められる背景
業務効率化が急速に進むようになった背景としては、以下の3つの理由が挙げられます。まだまだ十分な効率化が行われているとは言えませんが、来るべき日のために準備を進めることが大切です。
人材の不足
1つ目の理由は、人手の不足です。日本は少子高齢化の問題が深刻で、多くの企業が十分な人材を確保することができていません。少子化によって若手人材の確保および育成が進んでいないのはもちろんですが、建設業・製造業などにおいては高齢化によるベテラン作業員の引退も進んでいます。
これまで社内で培ってきたノウハウが、ベテランの引退によって失われてしまえば、組織の生産力低下や、ノウハウの喪失によってブランド価値の維持や事業継続が困難になったりする恐れもあります。
こういった事態を回避するためにも、業務効率化によって必要な人手を減らし、余計な作業労働を自動化することが重要です。そうすることで、優れた経験を有した人材を「若手の教育」や「マニュアル・フレームワーク作成」、「マネジメント業務」などの業務に配置することができ、蓄積したノウハウをより高度なレベルで活用できるようになります。
「2025年の崖」の到来
2つ目の理由は、「2025年の崖」の到来です。経済産業省が2018年に発表したレポートによると、日本ではデジタル化による業務効率化、つまりデジタルトランスフォーメーション(DX)が今のまま進まない場合、2025年以降 最大12兆円もの損失を日本全体で被ることになると試算しています。ここでいう損失とは、古くなったシステムのメンテナンス費用の増大や、最新システムとの互換性が失われることによる機会損失や業務の煩雑化などによってもたらされるものが挙げられます。
参考:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~(METI/経済産業省)
デジタルツールの活用は業務効率化に不可欠な存在として広く知られており、多様な業務に導入できるだけでなく、製品の多様化が進んだことで、リーズナブルな価格で利用できるサービスも増加しています。
デジタル化は大企業にしかできない初期投資が必要な取り組みでしたが、今や中小企業や個人でも気軽に利用できるサービスが数多く登場しているのです。こういったサービスの積極的な活用によってDXを推進することが今後の中小企業に求められています。
国内市場の縮小と国際競争の激化
3つ目の背景は、国内市場の縮小と国際競争の激化です。少子高齢化や景気後退の影響もあり、日本市場はあらゆる業界において縮小傾向が進み、顧客の獲得競争が激化しています。
また海外に目を向けてみると、中国をはじめ、東南アジア諸国においては大きな経済発展を遂げ、日本と変わらないあるいはそれ以上の生活水準に達し、消費意欲が高まっている地域も続々と登場しています。これらの地域では企業のデジタル化も著しく、最新の技術をフル活用した経済活動を実現し、先進国に劣らない生産性も獲得するに至っています。
日本企業が安定した成長を遂げる上で、このようなグローバル市場への参入は程度の差こそあれ、不可避の状況となりつつあります。グローバル市場でブランド価値を損なわないためにも、業務効率化によって高いコストパフォーマンスやクオリティを実現することが必要です。
業務効率化のメリット
業務効率化の必要性が叫ばれるのは、施策の実現によって得られる恩恵が大きいことも理由の一つです。ここでは、業務効率化に期待できるメリットについてご紹介します。
コスト削減
1つ目のメリットは、コスト削減につながる点です。業務効率化の目的は不要な業務や設備を削減し、組織の負担削減に努めることなので、維持管理コストに悩んでいる場合には業務効率化の取り組みが有効です。
業務効率化によって企業の運営コストを削減することで事業の収益性を高められ、安定した事業経営基盤の構築と更なる企業の成長を促せます。単純な規模の拡大に頭打ちの気配が漂いはじめた場合でも、業務効率化によって更なる成長が期待できるでしょう。
従業員満足度の向上
2つ目のメリットは、従業員満足度の向上です。業務効率化によって効率化が可能な業務の多くは、企業の収益に直接関係はしないが時間のかかる作業労働です。これらの業務の多くは対応が不可欠でありながら、時間と労力を割くものでもあり、対応する人員のモチベーションを下げる要因となるケースもあります。
業務効率化を推進し、こういった作業労働の負担を大幅に削減することで、社員は自身のスキルをフルに活用できる、やりがいのある業務に集中することができます。モチベーション改善による生産性向上はもちろん、働きがいのある職場は離職率の低下にもつながるため、人材確保のコスト削減にも間接的につながってくるでしょう。
削減した時間の有効活用
3つ目のメリットは、業務効率化によって生まれた作業時間の有効活用です。作業労働が業務効率化によって削減されると、その分社員は従来のルーティンワークから解放された時間を別の業務に割り当てることができます。個人レベルでの働き方改革につながるのはもちろん、経営面から見ても人材の多様な活用や能力のある人間の積極的な登用にも貢献します。
バックオフィス業務の負担が減ったことで、そこで持て余している人材をより高度な意思決定が必要な部門へ再配置したり、営業人員の拡大によって企業の売上拡大へ直接貢献してもらったりといった展開も実現可能です。
業務効率化の手順
業務効率化の施策を成功させ、その効果を最大化するためには、適切なプロセスを踏む必要があります。ここでは、成功につながりやすいポピュラーな業務効率化の手順についてご紹介します。
①業務を可視化する
業務効率化の1つ目のステップは、業務の可視化です。そもそも自社の事業はどのようなプロセスで成り立っているのか、文字や数字に起こしてみることで客観的に自社の業務の様子を捉えることができます。
業務を可視化することで、解消すべき課題を発見することができたり、思っていたほどパフォーマンスが出ていない箇所が見つかったり、そのほか改善の余地の発見にもつながるでしょう。
②現状の問題点を把握する
2つ目に、現状の問題点の把握です。業務を可視化したことで見える化された課題を洗い出し、どんな問題を抱えているのかを一覧としてリストアップしましょう。また、それぞれの問題点がどのような不利益を組織に与えているのか、解消すべき問題の優先度合いはどうかなども合わせてチェックすることが大切です。
③導入するソリューションを検討する
3つ目の手順は、導入するソリューションの検討および選定です。洗い出した課題をもとに、どんなソリューションを実施すれば成果につながるのかを考えましょう。
ソリューションの検討にあたっては、社内の制度や規則を変更することで達成できるものもあれば、新たにツールや人材を確保することで達成できるものもあります。どのようなソリューションであれば最も効果的か、どれくらいの期間(短期的・中長期的など)で結果につながるのかなど、目的やスケジュール・予算に応じた選定を行いましょう。
④導入に向けた研修を実施する
4つ目の手順は、研修の実施です。どれだけ有益なソリューションを導入できるとしても、実際にそれを運用するのは現場の社員であるため、彼らの習熟度によって目標達成の成功率は大きく変化します。
新しい制度やシステムを導入する場合、それらを正しく運用するための研修やトレーニング期間は欠かせません。社員のスキルセットに応じて、最適な研修カリキュラムと十分な時間を用意し、最大限新しい仕組みを活用できるよう準備しましょう。
⑤導入後の効果測定を実施し、改善を施す
5つ目は、ソリューション導入後の運用体制についてです。ただ仕組みを導入して終わり、というわけではなく、正しく期待していた通りの業務効率化を進められているかどうか、効果測定を実施することが大切です。
効果測定から得られた結果をもとに、正しく運用できているか、改善の余地はないかを検討します。効果が出ていないときは「どのような問題が発生しているのか」、効果が確認できる場合は「より高いパフォーマンスを出すためにはどうすれば良いか」「新たに発生した問題などはないか」を確認し、改善のための施策検討につなげましょう。
業務効率化ツール8選
ここでは業務効率化に役立つ主な8つのツールについてご紹介します。自社課題に適したツールの運用を進めましょう。
①オンライン会議サービス
1つ目は、オンライン会議サービスです。電話や対面ではなく、ビデオ通話機能を活用したツールを利用することで、非対面でもリアルタイムのコミュニケーションを綿密に取ることができます。
②ビジネスチャット
2つ目は、ビジネスチャットツールです。メールよりも簡単かつリアルタイムのテキストコミュニケーションができるビジネスチャットツールは、遠隔でのやりとりはもちろん、資料共有を安全かつ確実に行うためのツールとしても役に立ちます。
③プロジェクト管理ツール
3つ目はプロジェクト管理ツールです。社内プロジェクトがスケジュール通り進んでいるか・進捗はどの程度得られているかを、管理者はシステムを通じて一括確認することができます。非対面の環境でもコミュニケーションが行えるだけでなく、プロジェクトの進捗を可視化できるので、スケジュール管理やタスク管理も丁寧に行えるようになります。
④勤怠管理アプリ
4つ目は勤怠管理アプリです。オフィスのタイムカードを利用しなくとも、社員はスマホやPCから勤怠情報を送信できるので、リモートワークの促進につながります。勤怠情報は自動でシステムに保存され、月末の締め作業の負担も大幅に軽減されます。
⑤日報・業務報告アプリ
5つ目は日報、業務報告アプリです。報告業務をテンプレート化し、一から日報などを作成する必要がなくなるので、業務の負担軽減に大きく貢献します。
⑥タスク管理ツール
6つ目はタスク管理ツールです。個人で抱えている日々のToDoをシステムで管理することにより、業務の対応漏れを防ぎ、確実なタスク消化を促してくれます。
⑦ワークフローシステム
7つ目はワークフローシステムです。申請・承認作業のフローを自動化し、オンライン上の簡単な操作でスピーディに承認を進められるようになるため、プロジェクトが遅々として進まない状況を打破することができます。
⑧RPA
RPAは、作業労働を自動化するためのシステムです。あらかじめプログラムされた通りに作業労働となっているルーティンワークを自動化することができ、ルーティンワークの負担を大幅に削減します。口コミ調査やその他集計作業など、データ収集の効率化にも役立つツールです。
業務効率化ツールを選ぶ際のポイント
業務効率化ツールを正しく選ぶためには、そのポイントをおさえることも大切です。ツール選びの3つのポイントを確認しましょう。
操作は簡単か
1つ目のポイントは、操作性です。多くの機能を有しているが操作が難しいシステムは、ITに慣れていない現場に投入すると余計な混乱を招く恐れがあります。初めのうちはシンプルで操作性に優れるシステムを優先し、速やかにツールを活用できるよう促しましょう。
自社課題に適したツールであるか
2つ目のポイントは、自社課題に適したツールであるかどうかです。自社の課題に適していない、あるいは特定の課題を解消するが他に優先すべき課題がある場合などは、期待していたような効果を得ることは難しいでしょう。ツール導入であればなんでも良いわけではなく、自社の課題と向き合った上で最適なソリューションを導入することが肝要です。
サポート体制は充実しているか
3つ目のポイントは、サポート体制が充実しているかどうかです。システム導入の初期はツールに使い慣れていないこともあり、わからないことに直面したりトラブルに見舞われたりする機会が多数訪れる可能性があります。自社のノウハウだけで対応しようとすると大きな時間ロスになる恐れもあるので、メールや電話・チャットでの相談、トラブルシューティングに対応しているサービス提供事業者を探すことがスムーズなツール活用では重要になるでしょう。
ツールを有効活用して業務効率化を促進しよう
本記事では、業務効率化を進めるべき理由やどのように進めれば良いのかについて、ツールとともにご紹介しました。最適なソリューションは企業が抱えている課題によって異なるため、まずは自社課題の分析から始めるのが定石です。業務の可視化を進め、最短距離で業務効率化を進められるよう促しましょう。
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